2010-25,26
渡辺文樹は、映画監督というより興行師という呼び名のほうがしっくりくる稀有な存在だ。
そして彼の映画は見るというより体験するといったほうがふさわしい特殊な映画なのだ。
彼の映画がミニシアター含め、既存の映画館で上映されることはまずない。
地元福島で素人に毛が生えたような役者とスタッフを集め、脚本・監督・編集それに主演も自分自身という低予算の映画を作り、次は自ら映写技師として全国各地の公民館のような公共施設で上映会を開催。
上映会の告知は、手書きの扇動的な言葉を貼り付けたポスターのみ。
一発でそれと分かるポスターがゲリラ的に貼りまくられていたら、それがフミキが町に来た合図。
このポスターに出会うことから、フミキ体験が始まるのだ。
ってことで、新作「三島由紀夫」と「赤報隊」のポスターを街角で見つけたのが今年の2月大和市での上映予告のポスター。そしてゆっくりと都心に近づき中野での上映会があったので、この機会を逃さずと見てきた。
そういえば一昨年、フミキの逮捕という形で上映中止を繰り返し話題となった「ノモンハン」「天皇伝説」を体験した夜も雨だった。
会場に着くと、入り口受付には、美人だけど幸薄そうなフミキの奥さん、物販コーナーには娘さん、そして映写機の横にフミキ自身と、いつものようにまるで旅芸人のようなフミキ一家が出迎えてくれる。
今回の二部作、実は元々は1本の映画として製作を始めたものの、3時間半という大作になり(そういつもいつも)借金を踏み倒してばかりもいかないんで、前編後編を別の映画とし、2本分のお金を貰うことにさせていただいた。とフミキ本人からの断りがあり、作品解説の前口上から本編開始。
何と、今度の映画はモノクロスタンダード。
前編は、主人公の過去を回顧していく形で、松川事件に始まり、新左翼に裏で資金援助し自衛隊による治安維持出動の機会を作ろうとする右翼や保守派の暗躍、三島由紀夫と自衛隊のクーデター共謀、そして治安出動未遂から自決まで。
間に休憩時間を挟み後編は、自衛隊のレーダー基地候補地を巡る、銀行、メーカー、政治家、右翼、、、の陰謀策略を軸に、自衛隊・保守勢力内での反米愛国派と親米派の対立、リクルート事件、竹下金屏風事件、平和相銀・住友相銀合併、皇民党竹下誉め殺し・・そして赤報隊による朝日新聞阪神支局銃撃事件が全て裏でつながった政治と暴力の暗黒を暴いてみせる超大作。出てくる団体、人物全て実名。
と言っても素人役者のかみまくりのセリフがそのままだったり、ピントは度々ぼけていたり、アラをあげたらキリが無いし、わざかのような機材トラブルでの上映中断と集中して見続けられる映画じゃないんだけど、それも含めて渡辺文樹の映画と納得させられる力技。そんで出てくる役者の顔が全てザ昭和ないい顔揃い。
すでに他のブログでも言われているけど、反米愛国自主独立こそが日本を守る道と信じていた主人公が憲法9条こそ祖国防衛として正しいと目覚めるメッセージも含め、まさに渡辺文樹の集大成のような映画だった。
またフミキがあなたの街に来たときには是非に!
よく見るとチケットも、ちゃんと「三島由紀夫」仕様!