2010-7
敬愛する松江監督新作「ライブテープ」
主演前野健太監督松江哲明による元日の吉祥寺、武蔵野八幡宮から井の頭公園までの74分ワンカットのロードムーヴィー。
去年の東京国際映画祭の特別上映、映画の舞台となった吉祥寺バウスシアターでのロードショーともっと早く見る機会はあったんだが、この映画の主役前野健太の歌が生理的に苦手で踏ん切りが付かずにいた。
けど池袋シネマロサでの上映もいよいよ最終日、やっぱダメだったら途中で出てくれば済む話。見なかったことを後悔するより、見つめる前に飛んでみようじゃないかと行ってきた。
んで、結論は見てよかった。見るべき映画だった。
普段池袋は仕事でもプライベートでもテリトリーじゃないんで、シネマロサもここでしか見ることの出来ない映画でしか行かない。それは「童貞をプロデュース。」だったし「SRサイタマノラッパー」だったり。
そんなある意味聖地で、しかも客席前方で松江監督自身見ているという中で対峙。
前半、やっぱ前野健太の歌に馴染めず居心地の悪さも感じていたが、さすが松江映画。単純に前野健太が歌って歩くのを淡々と撮るのではなく、仕込み仕掛けがそこここで。主演の前野氏は、時に松江監督の仕掛けの共犯者であったり、監督との段取りを裏切ってみたり。二人の駆け引きに魅せられているうちにすっかりこの映画のトリコに。街中で見ず知らずの人たちを前に歌を歌うという行為がここまで刺激的なんだと。
特にサングラスのくだり。予備のサングラスに笑い、無くなった父親に関するインタビュー中、意を決し再びサングラスを外す前野健太にグっときて目頭熱くしたり。
僕も普段心にサングラスかけて身の回りから少しだけ距離を置き、必要以上に自分を守ろうとすることあるけど、一歩踏み出しサングラスを外さないと前に進めないこともあるんだよね。そしてその結果待っていた奇跡のラスト。東京の空の輝き。まさかあんなラストを引き寄せるとは。
見終わった後は全てがリセットされ生きる力がわいてきた。いや生きたいと切実に思う自分がいた。
監督自身言っていたけど偶然も必然に見せるのがドキュメンタリーの真髄。映画に愛された松江監督ならではのマジック。
今回も思ったけど、松枝監督ブログを読んでいる身としてはライブテープは、撮影当日からずっと知っていて気になってた映画。
http://d.hatena.ne.jp/matsue/20090101
その映画を見るという行為、そして見終わったあと感じる様々、日常自身が、連綿と続くドキュメンタリー松江哲明物語のエピソードのひとつのような気がしてくる。映画を見てる自分が映画を越えた松江ワールドに取り込まれていく感じ。
生きていかなきゃね。
次回作が早くも楽しみ。
http://www.spopro.net/livetape/